とりあえず人間は目の前にある物体を通り抜けることはできないので、目の前にガラスがあればビターン! とぶつかるし、閉じているドアを開けずに通ることは不可能なのです。量子力学? さっぱり分からないので勘弁してください。トンネル効果を期待するより現実的な話をしましょう。
朝、1階に下りたら玄関に通じているリビングのドアが閉まっていました。母は早朝の庭いじりのため屋外、夫はゴミ出しで外出中。時系列的に夫が閉めたとしか思えないので、夫にドアを閉めた理由を訊いてみたんですよ。そしたら耳を疑うどころか夫の認知能力を疑わざるを得ない言葉が……。
「知らない」
「閉めてない」
「開いてた」
いやいやいやいや! 閉めたのアナタでしょ! うち自動ドアじゃないんだけど! ていうか自動ドア便利そうだな!(そうじゃない)
なんというか前2つの発言は単純に閉めたことを覚えていないと受け取ることも可能ですが、それは私が「ドア閉じてたんだけど」と指摘した後に「そうだっけ? 覚えてないな」などといった言葉が出てくることが大前提なわけです。本人が覚えていないことを認知していることが重要なのに、夫は「開いてた」と言いました。誰もいない屋内で私が2分前に閉まっているドアを確認しているにもかかわらず、「開いてた」と言い張りました。どういうこと?
「いや閉まってたんだけど」
「閉めてない」
「じゃあ最初から閉まってたってこと? 閉じてるドアをすり抜けたとでも言うの? ゲームのバグか何かなの?」
「開いてた」
「開いてたなら誰が閉めたのよ」
「知らない」
「1階に誰もいなかったのに誰が閉めるのよ、自分で閉めたんでしょ」
「閉めてない」
「だーーーーーっ!」
「開いてた」
「だから最初に開いていたなら閉めた人間がいるはずなの! いなきゃおかしいの!」
「知らない」
「さっき私が閉まっているのを見たんだよ!」
「知らない」
「じゃあ侵入者がいるってこと?!」
「知らない」
「知らないじゃなくて閉めたこと忘れたんでしょ!?」
「開いてた」
「開いていたなら誰が閉めたのかって話なの!!」
「閉めてない」
「キーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
清々しいくらい「知らない」「閉めてない」「開いてた」のみで返答されたおかげでただでさえ高い不快指数が一気に200を突き抜けたような気分になりました。1文節で返答するのやめろ。せめて2文節くらい用意しろ。
あまりにあんまりなので家を出たついでに母に「さっき家の中に入ってリビングのドア閉めた?」と訊きましたよ。当然、家の中にすら入っていませんでしたよ。最初にドアを閉めたのは母で、朝日が射し込んで暑かったからという理由まで聞きました。
つまりドアは夫が1階に下りた時点で閉じていたし、夫はドアを開けて玄関に行ったし、ドアを閉めたのは夫自身ということになるんだよなあ!(と、夫を睨む)
そこまで判明してもなお納得の行かない顔をしている夫。大丈夫か本当に。その後どうにか「無意識に開閉してたんだろうなぁ」と納得できるようになったものの、思い返すと途中からどんどんヒートアップしていった私にも非があるのだろうと思います。夫は責められていると感じて間違いを認めたくなくなり、頑なに「知らない」と言い張ったのかなと。まぁ、夫は「知らないものは知らないから『知らない』としか言い様がない」という感じだったらしいですが。
とにかく、朝から疲れました。どっと疲れた。ああ。