昨晩は睡魔に負けて22時ごろ眠ってしまい、明け方に目が覚めてしまった。雨の日は眠い。再び眠りに就こうとしていたら、ある音がすることに気がついた。
トトトト……トットットッ……トト……トトトトト……
最初は雨音だろうと思ったが、違う。テンポが速い。仮にどこかに溜まった雨が溢れてどこかに滴り落ちる音としたら、勢いが良すぎる。それに不規則だ。雨音ならもう少し規則的な気がする。外を見ても既に雨は上がっていて、鳥や蛙が鳴いていた。
蛙。確かに遠くから聞こえる蛙の声にも聞こえなくはない。「ゲッゲッゲッ」とか「グワグワグワ」とかではなく、「コロコロコロ」という声。シュレーゲルアオガエルみたいな。みたいな、じゃなくてそうなんだけども。いや違う、家の中から聞こえるような気がする。まるで自分の腹の中から聞こえるような音がしている。間違っても私の腹の中にシュレーゲルアオガエルはいない。いてたまるか。
腹の音。いやそんなバカな。しかし、こんなテンポで腹が鳴ることは無いとは言い切れない。腹の音も多様だ。トトトトト……と鳴る可能性もあるかもしれない。鳴るか？ 腹だぞ？ こんな５分も10分も絶えずトトトトトトトと鳴り続ける腹が存在したとして、自身が全く体内の振動を感じないのはおかしい。これが本当に腹の音ならば病院へ行くべきだ。
振動、あるいは震動。小刻みに揺れるカタカタカタカタという音。確かに音としては近い。しかし震動の原因が存在しない。地震の情報は無いし、近場で夜間工事も早朝工事もやっていない。
結局何が原因なのか分からない、トトトトトトト……と聞こえ続ける謎の音。気にしないのが一番だとはいえ気になる。現在、この世で最も憎んでいる音はバイクの騒音かもしれないが、すぐにそれだと分かる音なので謎の音に比べたらまだマシかもしれないってそんなわけあるかふざけんな。すぐに思い直した。堪え難い。10分も20分も全く途切れず続いている微細な震動音、のようなもの。どうして私は音に振り回されるのだろう、夫は全く気にもせずグースカ寝ているというのに！ 夫が本気で羨ましくなった。嫌味でも何でもなく、本心だ。音が気にならない性格が羨ましい。
ミソフォニア、という言葉を知った。特定の音に対して怒りや不安などの感情が激しく表れたり心拍数が増加するなど、そんな感じの障害らしい。私か。読めば読むほど自分と重なる。バイクの騒音に対して、ここではとても書けないような感情を抱いたり、一瞬にして怒りのボルテージが最大に達したり堪えられなくて叫びたくなるなど、自分がおかしいのではないかとは常々思っていたが、ミソフォニアでもそのようになるらしいことが分かった。分かったが、特に解決策は得られていない。そして相変わらず謎の音は鳴り続けている。
昔、置き時計を買ったらコチコチコチコチコチコチ……という音に堪えられなくなって洗面所に移動させたことを思い出し、慌てて部屋の壁掛け時計を見た。30分前から止まっていた。秒針が45秒当たりから進めず、トトトト……トットットッ……トト……トトトトト……と、もがくように同じ位置で音を立てている。電池切れ。そう、電池切れ。単なる時計の電池切れの音に翻弄されていた。なんてこった。
電池を交換したら、時計は何事も無かったかのように動き始め、不快な謎の音は消えた。ジメッとした不快な朝だった。私はどうすればいいのだろう。
