あれはいつの話だっただろうか。花火大会があった時なのでお盆だったか。酒に酔った夫母が「甘く見ないでね!」と半笑いで吐き捨てるように言い、無言で見つめてきた事を覚えている。いつまでも、いつまでも、覚えている。
酒は感情や願望を増幅させるものだと思う。つまり、私に対して大なり小なり憤りを抱えているのだろうなと思っている。思い当たる節なんて、まぁ山ほどある。勝手に掃除したり片付けたりするというのは真っ先に思い付くが、他にもいわゆる「長男の嫁」なのに嫁らしい事は何もしないとか全然懐かないとか可愛げゼロとか孫がいねえとか、まぁ色々だ。それらに関して申し訳ないという気持ちがほとんど無いという事が一番の要因だろうか。
夫母は決して「嫁とか姑とかどうでもいいわ」というスタンスではない。夫祖母などに散々嫌な思いをさせられてきたから「私はそういう事はしない」と宣言しているだけだ。根本的にはガッチガチに因習にとらわれているように見える。だから「こちらが寛大にしているのに調子に乗りやがって、嫁らしいこと何一つしないで奔放に生きてんじゃねーよ」と無意識に思っている可能性もゼロではない。
さすがにそこまで憶測するのは行き過ぎな気もするが、「甘く見ないでね!」と言われた事が事実である以上、その言動に至るまでの経緯が何かしら存在するというのだけは明らかである。ちなみに直前の発言といえば「軋轢はあると思うけど、上手くやっていけると思う」だったか。そう、軋轢だ。意見が合わないどころではない。一歩間違えば戦争だ。単純に誤用である可能性は高いが、誤用だろうが酔ってようがそのような言動がポンポンと出てくるあたり、何かしら不満を持ってるのだろうと思われても仕方ないだろう。
夫母が理想の嫁像を持っているかは分からない。しかし仮に持っているならば、さぞかし私は理想から遠く掛け離れた、言わば宇宙人のような存在なのだろう。むしろ私の母と仲良くやっているようには見える。母も張り切っちゃって惣菜のお裾分けなんかしようとしてるし、というかしちゃってるし、私が買ったばかりのミニボウルが勝手に使われて戻ってこなくてヤキモキしている。1週間以上戻らないという事は、キッチンの物の山の中に埋もれてしまっているのだろう。返してくれないか、そろそろ。
そんな余談はさておき、「理想の嫁」とは何だろうか。そんなもの、突き詰めてしまえば「従順さ」であると思われる。
- 自分の意のままに動く人間
- 自分の意に逆らう人間
どちらかをパートナーに選べと言われたら、大抵は前者を選ぶだろう。「思い通りにならない相手だから人生は楽しいんだ」という考えもあるにはあるけども、嫁姑の関係においてそれは無い。意のままに動くどころか先回りして気を配るような完璧さが求められ、完遂したところで「完璧過ぎてムカつく」と嫌われる。それが嫁姑の関係……というのは言い過ぎだし例外も当然存在するが、嫁だの姑だの言ってる時点で面倒なしがらみは発生しているのだ。
そして先日の連休では親族が旧居に集まり、一気にキレイになりましたとさ。
仏壇も無くなり、押し入れの中身も全部出してスッキリしましたとさ。
ま、縁側に全部集めただけなんだけどもね。そして「後は業者に頼むから何もしなくていい」と言われたわけだ。「3人集まれば文殊の知恵でねー、まとめるのが大変だったよー」という、それ親族ディスってないか*1*2*3という疑問の残る言い方をする夫母の心情を察すると、「これ以上話を面倒臭くすんな」だろう。私は初志貫徹で「片付ける」「捨てる」の2つを実践しているだけなので引っ掻き回しているのはどちらですかと訊きたくもなるが、決定権が私にあるわけもないので呑み込むしかない。喩えるなら従業者は雇用主に逆らえないようなもの。そりゃー腑に落ちなくても従うしかないのだろう。
これもそのままにしておけと言われた。「え、燃やせるゴミに出せるように切ったんですけど、結構時間掛かったんですけど」と、思わず口から出ていた。従順さってどこに行けば売ってるんですかね。
「これもバラさなくていいからね」と釘を刺された。業者呼んで見積もりしてもらうなら、せめて同じ場所にまとめといた方がいいと思うんだけどな。そしたら「そういうのはお金払ってやってもらうんだからしなくていい」って言うんだよ。言いたい事は分かる。だがしかし、私は「お金払ってやってるんだから」という考え方が好かん。というか、そこまでさせるならゴミ処分というより片付け代行になるのではないか。
ああ、そうか。なるほど。そういう事だったのか。私が業者に頼むからなんて言われたのが腑に落ちなかったのは、あまりにも漠然と「業者に頼めば何もしなくても何でも持って行ってもらえる(あと、あわよくば売れる)」と考えられているからだったんだ。
夫母……ゴミ持って行ってもらう=片付けてもらう
私……ゴミ処分と片付けは別個の問題
話が噛み合わないのも納得だ、考え方がこんなに違うのだから。
あ、これは材木系のゴミをまとめておくのに使えるな。
左上に光の玉が2つあるのは怪奇現象ではなく名前隠しで私が塗っただけ。大量のカセットテープ&ビデオテープは普通に燃やせるゴミでいいんだよ。
袋が破れないように切り裂いたカーテンも利用して詰めるんだよ。
燃やせないゴミは持ち帰ろうと思ったけど、燃やせないゴミ袋も余ってるので袋に入れて持ってってもらうか。途中から普通に片付け始めたけども、結局私というのはこういう人間なんだよ。
だから、冒頭の「甘く見ないでね」という言葉は、そっくりそのまま夫母にお返ししたい。最後の1ヶ月そこらの物の状態を見て大変だとか思わないでほしい。こんなレベルで音を上げないでほしい。
夫母のした片付けなんて、ほとんどが物の移動だ。自宅に持っていっただけだ。物を溜め込むのをやめてほしい。使わない物はキッチリ処分してほしい。使うかもしれないなんて安易に思わないでほしい。自宅の庭にある物は徹底的に片付けさせてもらう。私を甘く見ないでほしい。以上である。